【NuAns NEO発表記念★特別編】「ほっしー、Shadowbaneやめるってよ……」ギルドリーダーが10年経ったらスマホメーカーのリーダーになってた話。


 

(これはNuAns NEOに関する記事ですが、前振りがとんでもなく長いです)

 

 

 

我々は当時、そのゲームに夢中だった。

それはPvPゲームでWARゲームだった。

※PvP=プレイヤー同士の対戦

プレイヤーはサーバーにアクセスし、1000人が同じステージでプレイする──今でこそ当たり前になったMMO、その黎明期。

広大なマップ内を自由に動き回ることができ、時間は公平に流れた。

プレイヤーは街や国を作れた。店を持って商売ができた。

国家間の交渉も、そして戦争もできた。

プレイヤーはどこででもモンスターを倒し、たとえ買い物中だろうと他のプレイヤーに戦闘をふっかけられた。

殺されたら所持品も金も持っていかれた。

PK集団が闊歩し、まったりプレイを楽しむ平和主義者たちを日々蹂躙した。

※PK=Player Killer。Player Killing。他のPCキャラを殺す人、または殺すこと

 

PK上等──それが「Shadowbane」の世界だった。

 

ネット多角経営だったオン・ザ・エッヂ(現ライブドア)が日本に持ち込んだマイナーなオンラインゲームの一つでしかなかったが、Shadowbane(SB)は真のMMORPG好きを虜にした。

Shadowbaneとは (Albertホームページより)

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MMORPGでこれほどまでに絶妙なバランスのゲームは見たことがない、と断言できる伝説のゲームだ(ここまで書いといて何だが、異論は認める)。

 

毎月課金の有料ゲーム。なのにグラフィックはイマイチだった。バグがあった。サーバーが止まった、巻き戻った。中国のプレイヤーがなだれ込んでZERG連発だった。毎日殺された。

※ZERG=大人数で少数を殺す行為の蔑称

でも、みんな離れなかった。

SBには、それだけの魅力があった。

 

現在はサービスなんかとっくに終了しているが、(おそらくはUbisoftからゲームを買い取り)いまだにエミュレーターを動かして、その当時に帰りたがる連中がいるほどだ。

 

そんなSBだが、不幸なことにWindows/Macの両方に対応した、というかMacが対応していた、ほぼ唯一のMMORPGだった。なので、そんなことが大好きなMacユーザーがここに集結してしまった。

そんな中にボクもいて、そんな中にほっしーもいた。

 

ボクたちは日々戦った。毎日狩りをしてお金を稼いだ。強いキャラを作るため。自分たちのギルド(所属する集団)を守るため。自分たちのネイション(ギルドが属する国家)を守るため。昼も夜も、勤務中も戦った。毎晩IRCに集合した。朝方までプレイした。

※IRC=当時のオンラインゲーマー御用達のチャット

完全に自分の生活を犠牲にしていた。

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Hossy(当時のハンドルは欧文だったので)はギルドリーダー(GL)だった。所属していたギルドが解散した時、仲間を集めて新しいギルドを作ったのだ。自分の好きなスタンスでプレイしたかったんだと思う。ギルドのホームページがカッコよかった。

Hossyはリーダーとしての頭角を現し、彼のギルド「HeartBeat(HB)」はSBをものすごく盛り上げてくれた。ボクは別のギルドだったけど同盟関係だったし、野良プレイヤーのフリをして近づいて遊んだこともある。

 

ギルドの運営は大変だ。

街の管理や運営、他のギルドとの交渉や日々の情報発信、戦争が始まったら指揮もしなくちゃいけない。戦闘がうまくいかないと熱くなったギルメン同士がチャット上でケンカになったりするので、メンバーの調整も必要だ。ギルドのスタンスに合わずにメンバーが抜けそうになったり、野良のプレイヤーをリクルートしたりと、まさに人間関係でギルドは成り立っていた。

だからGLに人徳がないとギルドが成立しなかった。

Hossyはギルドをよくまとめていた。HBは常にアクティブなギルドだった。

 

ある日、ボクたちがプレイしていたアジアサーバーに中国のプレイヤーが大挙して押し寄せてきた。このゲームにおいて数は力だ。サーバー内のバランスが崩れそうになった。ボクらはスタンスの異なる複数のギルドを集め、対抗組織を作って戦った。Hossyのギルドも、ボクのギルドもいっしょに戦った。IRCには毎日、戦争の情報が飛び交っていた。早朝4時だろうが、平日の昼間の2時だろうが戦った。負けたら反省会を開いて、次の作戦を練った。

長く重い戦いの末、最終的にボクらは勝利を収めた。

 

その頃からだんだんMacのクライアントの不具合が目立ち始め、Macユーザーはあんまり動けなくなってきた。思うようにプレイできないメンバーは、POP率(参加率)が下がってきた。というかSBのためだけにWindowsマシンを買ってた。それでもHossyはSBを盛り上げようとがんばっていた。RoC WARというイベントが楽しかった。 RoC WAR 

そのうちにアジアサーバーの運営は終わった。しかしボクたちはSBを諦めきれず、北米のサーバーに移住した。

 

そんなある日、夜中のIRCにナルト(@=アラート)が飛んできた。

 

「ほっしー、Shadowbaneやめるってよ……」

 

GLは誰かに譲り、仕事に本腰を入れるという話だった。あれほどSBを盛り上げるためにがんばっていたHossyが抜ける──流れとしては理解できたが、SBプレイヤーにとってはけっこうショックだった。

それが2005年12月の話。

当時アスキーというIT系出版社にいたボクは、仕事柄、彼の立場は何となく知っていた。

その後、Hossyは独立し、会社を興した。

それがトリニティ

 

彼が前職で得意としていたiPodのアクセサリーを中心に扱う会社だった。ボクは密かに応援し、何かのアクセサリーをそっと購入した。その後ボクは、ITの世界から離れ、ライフスタイルやビジネスやホビーの雑誌を渡り歩いた。

ふたたびITの世界に戻ってきたのは3年ほど前。あれから7年、トリニティは順調に業績を伸ばしていたようだ。

 

そしてSB引退から10年経った2015年、Hossyはスマホを作った。

それが突然発表された10月、まさかスマホを開発するとは思ってなかったボクは驚いて、思わずHossyに「感動した!」とだけメッセージを送った。

 

NuAns NEO

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詳しいレポートは他に譲るが、

遊び心があり、こだわりがあり、何しろオリジナルの端末。

ほぼ未開の地と言っていい、Windows 10のスマホ。

アップル一辺倒だと思われていたほっしーがWindowsフォンを作るということを意外に感じる人もいるかもしれないが、ボクは発表会でその独自性のあるコンセプトを聞いて腑に落ちた。

 

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<参考記事>スマホケースメーカーがスマホを作ると……こう来たか!「NuAns NEO」

 

NuAns NEOは大人気だ。メディア展開は大成功しているし、みんな好意的な記事だ。とはいえ、ここからが本番だ。たぶん苦難もある。

でもきっと大丈夫。

発表会のほっしーには、かつてのGLの姿が重なって見えた。

 

これからもほっしーのスタンスを貫いて進んでいってほしいと思う。

この記事はボクからの個人的なBUFFUP@

 

 

矢野裕彦 a.k.a. rewop@AppleBrigade

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